管制誤りで、山岳に異常接近

GPWSに救われたようです。パイロットは不審に思わなかったのでしょうか。

26日13時40分ごろ、北海道旭川市付近の上空を飛行中のエアーニッポン機(乗客乗員57人)で、地表に異常接近していることを示す警報が鳴った。同機は上昇して回避し、けが人はなかった。現場は大雪山系の山岳地帯で、同機は管制官の指示に従って降下中だった。運輸安全委員会は27日、事故につながる可能性があったとして調査を始めた。
異常接近したのは中部発旭川行きのB737-800型機。国土交通省によると、同機は着陸に向けて次第に高度を下げながら、旭川空港の上空をいったん通り過ぎた後に右旋回。その後、同空港の東約30km付近の高度約2,100mを飛行中に対地接近警報装置(GPWS*1)が作動したという。
付近には2,000m級の山が連なっており、同機は山に近づいていた可能性がある。全日空によると機体に異常はなかったといい、機長は「管制官の指示通りに計器飛行していた」と話しているという。
同機を管制していたのは札幌航空交通管制部の管制官。運輸安全委は同機のデジタル飛行データ記録装置や交信記録を解析し、管制官の指示が適切だったかなどを調べる。
(2010年10月27日=asahi.com

<2010年10月28日追記>

旭川空港近くの山岳地帯で26日、エアーニッポンANK)機の対地接近警報装置(GPWS)が作動したトラブルで、国土交通省は27日、管制官が同機に、周囲の山の標高よりも低い高度まで降下するよう誤って指示していたことを明らかにした。最接近時には山肌まで520mしかなかったとみられ、操縦士が回避操作しなければ山に衝突していた。
国交省によると、誤指示をしたのは札幌航空交通管制部の30歳代の男性管制官。2,000m級の山が連なる空港東側の空域は、管制官がレーダーで航空機を誘導する際の最低高度が内規で約3,000mと定められている。だが、管制官ANK機に約1,500mまで降下するよう指示していた。
管制官国交省の調査に対し、「最低高度を失念していた」と話しているという。全日空によると、機長は「管制官の指示通りに飛んでいた」と話しているという。当時は悪天候で、雲の中を飛んでいて視界はきかなかったとみられる。高度約2,100m付近を降下中にGPWSの警報が鳴ったため、操縦士は急上昇して回避したが、約1分後に高度2,560m付近で地表に最接近したとみられる。航空機の速度を800km/hとすると、1秒で222m進む計算になる。
GPWSは電波高度計や降下率計などを使い、山や地表に近づきすぎると警報を発する。このANK機では、地表が近いことを示す警報に加え、機体を上昇させるよう求めるさらに強い警報が鳴っていた。操縦士はこの警報が鳴るとエンジン出力を最大にして急上昇するよう訓練されているという。国交省によると、GPWSが作動して危険を回避したケースは2009年度に30件あったが、事故につながる可能性があったと判断された例は過去にない。
運輸安全委員会は27日、機長らから経緯を聴くなど調査を始めた。今後は機体のデジタル飛行データ記録装置や交信記録を解析し、詳しい原因を調べる。
現役のパイロット(59歳)は「GPWSに従ったから助かったが、相当危険な状況。管制官にあってはならないミスだ」と指摘する。元日本航空機長で航空評論家小林宏之さん(64歳)は「この状態の危険度は、機体がどれぐらい降下していたかにもよるが、GPWSが鳴るのは一番危険度が高い状態だ。パイロットも最低高度より低い高度に誘導されたら管制官に確認すべきだ」と話す。
(2010年10月28日=asahi.com

*1:「Ground Proximity Warning System」の略です。