HAC機、奥尻空港で地表に異常接近

国土交通省は10日、函館空港奥尻空港行きの北海道エアシステム(HAC)機が4日に奥尻空港で視界不良のため着陸を断念した際、機体が地上約30m付近まで近づき、障害物との異常接近を知らせる対地接近警報装置(GPWS)が作動していたと発表した。同省は、事故につながる恐れのある重大インシデントに当たると判断し、立ち入り検査を検討している。運輸安全委員会は11日、航空事故調査官3人を札幌に派遣し、一度は上昇したはずの機体が降下した原因や、それに気付くのが遅れた理由などについて、機長(41歳)や副操縦士(30歳)から当時の状況を聞く。
(2011年6月11日=Doshin web

国土交通省は10日、奥尻島付近で函館発奥尻行き北海道エアシステム(HAC)のプロペラ機2891便(サーブ式340B型、乗員乗客13人)が地表30mまで接近し急上昇するトラブルが4日にあったと発表した。同省運輸安全委員会は大事故につながりかねない重大インシデントと判断、調査官3人を11日に現地へ派遣する。また、同社はこの事実を国交省に直ちに知らせていなかった経緯も調べる。
国交省航空局などによると、HAC機は4日11時12分ごろ函館空港を出発。奥尻空港に近付いたため、着陸態勢を取ろうと高度約200m付近で水平飛行に入った。天候不順のため奥尻空港の約1.5km手前で着陸をあきらめ、いったん同210mほどまで上昇したが、その後に下降。同11時26分に対地接近警報装置(GPWS)が作動し、パイロットが気付いて急上昇した。
HAC機が下降した理由は不明。最も近づいた地表は奥尻空港の敷地内だったという。警報後、機体は通常使用を大きく超える出力で上昇したためエンジンに負荷がかかり、9日の離陸準備中にエンジン異常の警告ランプが点灯した。エンジン交換が必要という。
同社は4日後の8日、GPWSの作動に基づく回避措置を取ったとして国交省に報告したが、地表から30mまで接近したことは伝えていなかった。接近の事実は10日、国交省が同社に問い合わせた中で発覚した。
報告が遅れたため、操縦室内の会話や管制機関との交信内容を録音する音声記録装置はデータが上書きされ、残っていないという。
国交省によると、GPWSの作動に伴い地表への衝突を回避するために緊急操作した重大インシデントは、2010年10月に続き*12例目。
HACは報告遅れについて「当初は重大インシデントととらえなかった。6日以降にフライトレコーダーを調べ、初めて重大性を知った」と説明している。
(2011年6月11日=毎日jp

北海道の奥尻空港付近で北海道エアシステム(HAC)のサーブ340B型機が地上に異常接近した重大インシデントで、同社は12日に記者会見を開き、整備会社からデータ解析の結果を受けた7日午後に機長へ聞き取りを行ったところ、機長が「雲を出たら地表の緑が見えた」と証言していることを明らかにした。
対応がさらに遅れていれば、数秒後に墜落していた可能性が高かったことをHACが初めて明言した。機体は地表約30mまで接近していたが、機長は当初、「警報装置が作動したが、通常の操縦の範囲で回復した」と報告していた。
記者会見で、福岡武司・乗員部長は、副操縦士が機長に「上昇していませんよ」と助言した際、降下率などを示す「昇降計」に、1分間で500ft(約450m)降下している表示が出ていたことを明らかにした。そのまま降下していれば、数秒後に墜落していた可能性が高かった。
(2011年6月13日=YOMIURI ONLINE

北海道の奥尻空港付近で北海道エアシステム(HAC)のプロペラ機(サーブ340、乗客乗員13人)が着陸をやり直す際、地上約30mまで異常接近したトラブルで、同機が通常の着陸時の約2.7倍の降下率で急降下していたことが13日、HACなどへの取材で分かった。速度も規定を約150km/h超過していた。
HACなどによると、同機は高度約180mで、奥尻空港への着陸に向けた「アプローチ」中だったが、視界が悪く、空港の手前約1.5kmで着陸のやり直しを決めた。この時の速度は、約370km/h*2だった。
サーブ340は国土交通省が認可した運用規定で、アプローチは約220km/h*3とされており、約1.6倍の速度が出ていた。
同機はいったん高度約200mまで上昇した後、急降下。対地接近警報装置が作動し、機長が回避操作をして機体は急上昇した。
急降下した時の降下率は、1分当たり約460m。運用規定では着陸時の降下率を1分当たり約170メートルと定めており、約2.7倍だった。
国交省幹部は「回避操作をしなければ、1秒未満で地上に衝突したとみられる。相当深刻な問題だ」としている。 
(2011年6月14日=asahi.com

<2011年6月29日追記>

北海道の奥尻島で4日、北海道エアシステム(HAC)のプロペラ機(乗客乗員13人)が地表に異常接近したトラブルで、国土交通省は29日、同社に航空法に基づく事業改善命令を出した。安全管理と乗員の技量管理に問題があったと指摘し、1カ月後をめどに再発防止策の提出を求める。
旅客機を運航する航空会社への事業改善命令は、2005年に整備ミスや管制指示違反が相次いだ日本航空に出されて以来、4例目で、地域航空会社に出されるのは初めて。HACから整備を請け負っていた日本エアコミューターについても、トラブル後の対応が不適切だったとして業務改善勧告を出した。
(2011年6月29日=asahi.com

*1:2010年10月の事故はこれです。

*2:多分、200ktのことです。

*3:多分、120ktのことです。