発信者情報は開示すべきだが非開示としたことに対する損害賠償は不要とされた事例

インターネット上の掲示板「2ちゃんねる」への中傷書き込みをめぐり、最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長)は13日、書き込んだ人の情報を開示しなかったことに対するプロバイダー(接続業者)の損害賠償責任を認める範囲について「権利侵害が明白か、重大な過失がある場合に限られる」とする初判断を示した。
神奈川県小田原市の学校法人湘南ライナス学園の学園長が「気違い」と書き込まれて名誉を傷つけられたのに、発信者を開示しないとして、プロバイダーを運営する「KDDI」に、開示と100万円の損害賠償を請求。一審・東京地裁は賠償を認めず、二審・東京高裁は15万円の賠償を命じていた。
プロバイダー責任制限法は、ネット上での権利侵害が明らかで、損害賠償の請求など正当な理由がある場合に限り、被害者側への発信者情報の開示を認めている。また、これを開示しなかった業者の賠償責任は、業者に「故意か重大な過失」がある場合に限定している。
第三小法廷は「発信者情報は表現の自由や通信の秘密にかかわり、いったん開示されると回復不可能」と同法の趣旨を尊重。今回の書き込み内容を検討し、「侮辱的な表現はあるが、具体的な根拠を示しておらず、社会通念上の許容範囲を超えたかどうか一見して明白とはいえない」として、学園長側の賠償の請求は退けた。
ただし判決は、発信者情報の開示そのものは認めた。この情報をもとに学園長側が発信者に改めて賠償を請求すれば、認められる可能性は残っている。
(2010年4月13日=asahi.com

参考までに、専門家のblogをいくつか。