富山地方鉄道中加積駅構内で脱線

30日18時13分頃、富山地方鉄道中加積駅構内で、発車直後の電鉄富山宇奈月温泉行き急行電車(2両編成)が脱線し約40m先で停車した。運転士と乗客約80人にけがはなかった。後続電車は上下線とも中加積〜中滑川駅間を区間運休した。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の調査官が1日、脱線の原因を調べる。
滑川署の調べでは、中加積駅を発車した直後、運転士が異常音に気付き、非常ブレーキを掛けた。後部車両の8つの車輪のうち、左側後輪の一つが線路内側に脱線していた。ホームと駅舎を結ぶ線路上の通路に脱線し始めたとみられる痕跡があった。脱線の影響で、その先20m近くにわたり、右側のレールと枕木を留める鉄製のくいが数センチ浮き上がっていた。脱線した車輪が乗り上げて折れた枕木のボルトも数本見つかった。置き石などの形跡はなかった。
富山地鉄によると、電車の車軸やレールに目立った異常はなく、脱線の原因は分かっていない。脱線した電車の運転士は「中加積駅を出発するまでは車両に異常を感じなかった」と話しているという。
富山地鉄区間運休に伴い、代替バス2台を運行した。脱線した電車の乗客は事故発生から約1時間半後に、はしごを使って電車を降り、バスで中滑川駅に向かった。
(2008年10月1日=北日本新聞)

<2009年4月24日追記>
保守不良というか手抜きのようです。

運輸安全委員会は24日、富山地方鉄道の安全管理に問題があったとする調査報告書を公表した。まくら木が腐ってレールを固定するくいが浮きあがり、レールが傾いたことが脱線の原因とされる。点検で危険な兆候があったが、放置されていた。鉄道会社のレールの保守管理のあり方が問われそうだ。
列車は宇奈月温泉駅行きの急行(2両編成)で、中加積駅を発車直後、2両目の左側の車輪一つが脱線。「ゴリゴリ」という異音に気づいた運転手がブレーキをかけて停車した。けが人はなかった。
報告書によると、現場は緩やかな左カーブ。遠心力で右方向に重心が移ったことで、右側のレールが外側に傾いた。この傾きによって左側のレールとの幅が広がり、左側の車輪がレールの内側に落ちたとみられる。
レールは本来、「犬くぎ」と呼ばれるくいで固定しているが、事故後に運輸安全委が現場周辺のレールを調べたところ、くいを打ちつけるまくら木が腐朽しており、くいが最大で6cmも浮きあがっていたほか、くいが折れているものや、手で簡単に抜ける状態のものもあった。
まくら木の腐りが激しかったのは、人が横断するための通路となっている場所だった。まくら木の上に板が敷いてあるため腐朽に気づかなかったとみられる。この付近から犬くぎが浮き上がり、レールが傾いたと推定される。
同社は事故の約1年前、検測車でレールの幅などを調べていた。その際に今回の現場付近で、異常にレール幅が広がっているデータが観測されていたが、同社はデータを精査することなく、対策を取らなかった。また、まくら木の状態について定期的に点検していたが、検査記録が保存されていなかった。
報告書は、記録を確実に保存し、保守管理を適切に行う必要性を指摘した。
同社は「検査が現場任せになっていた。対応に手抜かりがあった」と反省。事故後は敷板に隠れたまくら木を含めて検査し、記録を管理部門にも報告する体制をとったとしている。
(2009年4月24日=asahi.com