氷河特急、脱線、転覆

スイスは比較的安全に運行しできている国のはずです。何が起こったのでしょう。

スイス南部フィーシュで23日発生した観光列車「氷河特急*1」(6両編成、乗客約210人)の脱線事故で、地元警察は乗客1人が死亡、42人が負傷したと発表した。
旅行会社によると、死亡したのは兵庫県の女性(64歳)。日本外務省は、負傷者のうち38人は日本人観光客だったとしている。2人が意識不明との情報もある。
列車は、ツェルマットから東部のサンモリッツに向かう途中、短い橋に差し掛かる緩い左カーブで後部3両が脱線した。3両目と4両目が連結部で切り離され、前3両は橋を渡り切って停止。脱線した後ろ3両は橋の手前で止まった。
現場では夜通し、ライトの下で事故原因の調査や復旧作業が続いた。バレー州警察の広報担当者は本紙に「事故原因は不明」と語った。現場にいた関係者は、事故との因果関係は不明だと断ったうえで、「ここ数日の暑さでレールが伸びたので、2日前にレールを少し切断して再び接続する作業を行った」と話した。
軽傷者は付近の病院で手当てを受け、重傷者はヘリコプターなどでジュネーブなどの病院に運ばれた。
日本外務省に入った現地警察の情報によると、この事故により1人が死亡、42人が負傷。また、在スイス日本大使館などの情報から、この死者と負傷者38人が邦人とみられるという。
一方、乗客のツアーを扱った旅行会社のうち、「ANAセールス」は、死亡したのは兵庫県尼崎市の女性(64歳)と発表した。実名は公表していない。また、神奈川県内の女性(71歳)が意識不明の重体のほか、同県内の女性(68歳)が病院の集中治療室で治療中で、千葉県内の女性(62歳)が意識不明だという。
JTBグループ会社、阪急交通社もこの列車を利用するツアーを扱っていた。3社の情報を総合すると列車には少なくとも77人の日本人が乗車しており、多くは中高年のツアー客だった。「ANAセールス」のツアーは今月20日から8日間の日程でスイス国内を観光。JTBグループ会社のツアーは、東京都や埼玉県など、主に関東在住の52〜84歳の日本人男女21人と女性添乗員(30歳)が参加した。事故当時は脱線した最後尾にある1等車車両に乗車。添乗員を含む12人が入院して治療を受けている。
(2010年7月24日=Yomiuri ONLINE

<2010年7月27日追記>
軌道の不具合だと先頭の方が危ないはずです。

アルプス観光列車「氷河特急脱線事故で、スイス捜査当局は26日、脱線した列車の運行記録装置を解析し、列車は事故当時、30〜50km/hの制限速度内で走行していたとの見方を強めた。事故調査の関係者が同日、本紙に明らかにした。
また列車の運転士が捜査当局に対し、「事故当日、レールに異変を感じた」と供述していたことも分かった。運転士が異変を感じた場所が事故現場付近かどうかは不明。事故原因は依然特定できず、結論が出るまでに数週間はかかる見通し。
脱線した車両は現場近くのブリークにある保守施設に運ばれ、捜査当局によると、車体のバランスを取る懸架装置やブレーキを中心に検証が進められている。事故列車の運行記録に基づき同日夜、ほぼ同じ条件で別の列車を走らせる現場検証も実施し、運行記録装置の信頼性などを確認する。一部の地元紙は、敷石を押し固める保守作業の不足で、レールが不安定だった可能性を指摘している。
氷河特急脱線事故で、スイスの警察当局者は26日、列車の運転士が供述しているレールの異変について「(レールの)変形のことだ」と説明した。また「車両自体には事故原因につながるような明白な問題は見つかっていない」と述べた。
警察当局は同施設に移動させた事故車両3両の検証を本格化し、作業を報道陣に公開した。
(2010年7月27日=CHUNICHI Web)

<2010年7月31日追記>
人的ミスによる速度超過だったようです。

日本人女性が死亡したスイス南部アルプス観光列車「氷河特急脱線事故で、スイス政府運輸当局は30日、現場から約10km離れたバレー州ブリークで、事故は速度超過が原因だったとする調査結果を発表、人的ミスと断定した。
鉄道の運行会社は、死亡した兵庫県尼崎市の女性(64歳)ら被害者にあらためて謝罪した。
1930年の開業以来最悪の惨事となった事故の原因究明を運輸当局は最優先した形で、「安全」を売り物にするスイス交通機関のイメージ悪化を最小限に抑える狙いがありそうだ。
発表によると、現場は制限速度が35km/hのカーブを抜け、制限速度55km/hの直線に通じる境界線上。客車がすべてこの境界を通過しないと速度を55km/hに上げることができない規則になっているにもかかわらず、5両目の途中が境界を通過中に56km/hに達していた。このため、6両目が脱線、その後、5両目、4両目が引きずられた。
事故当時、列車の運行は予定より遅れていたことも明らかになった。ただ、運行会社側は「遅れを取り戻すには十分な時間があった」と述べ、遅れが速度超過の原因との見方は否定した。
(2010年7月31日=CHUNICHI Web)

*1:スイス南部ツェルマットからサンモリッツまで約270kmを約7時間半で結ぶ観光列車。海抜2000m以上の山岳地帯を、計91のトンネルを通り抜け、291の橋を渡る。約30km/hで走る「世界一遅い特急」としても有名。壮大なアルプスの自然をパノラマの車窓から堪能でき、観光客の人気が高い。