多摩川駅で転落死

ホームの勾配を直すためには、路盤を下げないとならないので、大工事になりそうです。

東急東横線多摩川駅で13日、車いすの女性が下りホームから線路に転落し、翌日死亡する事故が起きていたことが分かった。警視庁田園調布署によると、このホームは線路に向かって傾斜しており、2年前にも車いすの転落事故が起きていたが、東急電鉄は抜本的な対策を講じていなかった。今回の事故を受け同社は16日、エレベーターの出入り口付近に柵を設置。田園調布署は、同社の対応に問題がなかったか事情を聴いている。
同署によると、13日16時半頃、車いすに乗った川崎市の無職女性(81歳)が、付き添いの長女(61歳)とエレベーターで1階改札から2階ホームに移動。長女が下で待っている利用者のためドアのボタンを押して閉めようと車いすから手を離したところ、車いすが約4.7m動き、約1.2m下の線路に転落した。女性は駅員に救助されたが、頭を強く打ち14日19時頃死亡した。
東急電鉄によると、駅のホームは通常、雨水を排水するため線路に向かって1m当たり約1cm傾斜しているが、多摩川駅の線路は緩い右カーブになっており、線路に合わせてホームを2.5cm傾斜させていた。現場のホームでは2007年9月にも車いすの95歳の女性が、付き添いの家族が離れたすきに線路に転落し足を骨折する事故が起きていた。
同社広報部は「前回の事故後、駅員に車いす利用者に注意するよう通達していたが、同じ場所で同様の事故が起きたことを深刻に受け止めている。他の駅にも問題がないか早急に確認したい」としている。
(2009年9月17日=毎日.jp)

<2009年9月23日追記>
現場は方面別複々線になっていて、内側が目黒線、外側が東横線になっています。右カーブになっているので、ホームは東横線側の傾斜がキツイはずです。ありそうなことかどうか、推測してみました。条件は以下のとおり。

  • ホームは幅10m、中央部が最も高く、内側へ1%、外側へ2.5%で傾斜
  • 内側線と外側線の軌道基準面はレベル
  • 軌間=1,067mm、カント=30mm、スラック=10mm
  • 車体幅=2,800mm
  • 車体はカントのとおり傾斜

内側のホーム端はホーム中央部より50mm、外側のホーム端はホーム中央部より125mm低くなります。その差、75mm。他方、この前提では、車体の外側が内側より78mm高くなりますから、ほぼ一致します。どこにでもありそうな罠ですね。
<2009年10月13日追記>
そもそも、内側線は20mの4扉車(東横線)と18mの3扉(一部5扉)車(日比谷線)が走るので、ホームドアなんて設置できません。

今年9月、東京都大田区東急東横線多摩川駅で、車いすに乗った81歳の女性がホームから転落し、翌日亡くなる事故が起きたホームは、傾斜が通常より急な2.5%なのに、東急電鉄の利用者への注意喚起が不十分だった。電車の到着に合わせて開く「ホームドア」の設置が望ましいが、ドアの位置が違う電車の相互乗り入れなどが壁となり、各鉄道会社とも、対策は思うように進んでいない。
東急電鉄と警視庁田園調布署によると、事故は9月13日16時半頃、下りホームで起きた。亡くなった女性は車いすを長女(61歳)に押してもらって1階改札からエレベーターに乗り、ホームがある2階で降りた。長女は車いすを乗り場に向けて置き、下の階で待っている人のために車いすから手を離してエレベーター内の「閉」ボタンを押そうとした。このすきに車いすは乗り場の方へ自然に動き出し、下り傾斜を進んで5m先のホーム端から1.2m下の線路上に転落したという。
ホームは雨水のはけをよくするため、端にかけて緩やかに下る構造になっているのが一般的で、同社によると、通常は1m当たり1cm下がる1%の傾斜。一方、同駅は線路のカーブに合わせて電車がホーム側に傾いて止まることから、段差を小さくするためホームの乗り場が低く、傾斜は2.5%と急だった。
このエレベーター前では2007年9月24日17時頃、女性(95歳)が車いすごと線路に転落し、左足を骨折した。今回の事故同様、介助の家族が手を離したすきの事故。家族が「車いすのストッパーをかけ忘れた」と話したことから、同社はホームの傾斜の危険性を重要視せず、車いす利用者への注意徹底を駅員に口頭で指示しただけだった。警視庁は2007年の事故での同社の対応について詳しく調べている。
同社鉄道事業本部事業統括部の太田雅文部長は「ホームの傾斜がお客様に知られていないことを見落としていた。2年前の事故の際に対策をとるべきだった」と話す。
同社は今回の事故を受け、エレベーターと乗り場の間に転落防止用のさく(高さ1.2m、幅5.5m)を設置。2%以上の傾斜がある東横線の中目黒、自由が丘、新丸子、武蔵小杉と田園都市線の渋谷、鷺沼、長津田の7駅に11月までに順次さくを設ける。
交通バリアフリー法(現・バリアフリー新法)が2000年11月に施行され、全国の駅でエレベーターの設置や段差の解消が進んだ。国土交通省鉄道局によると、2009年3月末時点で1日当たりの平均利用者数が5,000人以上の駅での達成率は約7割。車いす利用者にとって、多くの人の手を借りなくても駅構内を通行できるようになった。
同省の省令では、車いす利用者が通行しやすく、危なくないように排水のためのホームの傾斜は1%が標準と規定。ただ、構造上の理由でやむを得ない場合はそれ以上の傾斜を認めている。
傾斜が原因とみられる転落事故は他の鉄道会社でも起きている。いずれも付添人が手を離したすきだった。
JR東日本によると、2008年8月、中央本線上諏訪駅で電車から降りた車いすの乗客がいすごとホームから線路に転落。傾斜は1.4%だった。東京メトロでも2002年、銀座線上野広小路駅車いすが1.7%の傾斜を動き出し、乗っていた人が線路上に投げ出され、軽傷を負った。同社は現在、傾斜が2%を超える場所では、エレベーターの出入り口に線路に平行する通路やさくを設けている。
日本福祉のまちづくり学会理事で東洋大学ライフデザイン学部教授の川内美彦さん(56歳)は36年間、車いすに乗って公共交通機関を利用してきた。1%の傾斜でも車いすは動き出して危険だという。
川内さんは最も効果的な転落防止策としてホームドアを挙げる。しかし、異なる鉄道会社の相互乗り入れの場合、会社ごとに車両の規格やドアの位置が異なるため、整備が進まないのが実情だ。
同じような事故はベビーカーで起きてもおかしくない。川内さんは「鉄道会社は、車いすやベビーカー利用者を含めた利用者全体の転落防止策にさらに力を入れる必要がある。利用者側もホームは危険な場所だという意識を持ってほしい」と指摘する。
(2009年10月13日=asahi.com